「ICRA2023」ResearchPortトップカンファレンス定点観測 vol.10

2023年7月18日 14時28分 公開

本記事3行要約:

● Award論文のデモ動画を一覧にして公開(一般公開されているもののみ)
● IROS同様、日本人の採択率は高い数値(10%程)を記録している
● 国内採択件数ランキングでは東京大学 JSKの貢献が高い


ロボティクス分野における最高峰のカンファレンスとして、以前 IROS2022(参照:ResearchPortトップカンファレンス定点観測 vol.6) について取り上げました。この分野は、IROSとICRA(International Conference on Robotics and Automation)とが2つのトップティアカンファレンスとして開催されています。今回は、このロボティクス分野最高峰カンファレンスの一つであるICRAについて見てまいります。

ICRA 2023 開催概要
▶ 開催期間: 29 May. – 2 Jun., 2023
▶ 開催都市: London, UK
▶ 公式HP:  https://www.icra2023.org/

■ICRAとは

ICRAは、IEEEが主催するロボティクス分野の国際会議であり、日本の研究者も多数発表・参加しています。1984年に初回会議が開催されて以来、毎年開催されており、例年論文投稿は9月中旬・開催は翌年5月に設定されています。
今年度ICRA 2023は、5/29-6/2の日程で英国ロンドン開催でした。6,000名ほどが参加されたようです。COVID-19収束に伴い現地参加される方も増えており、展示や競技も以前のように実施されました。

ICRAで発表される内容やTopicsは、IROSに近く非常に多様で[AI・学習、制御、物体操作、センシング、人-機械システム、インタフェース、機構、(特定用途の)ロボットハードウェア、ロボット応用システム、ロボット安全担保、シミュレーション]などが含まれます(参照:「IROS2022」トップカンファレンス定点観測vol.6」)。

*ICRAで扱われている技術領域などの情報もIROSと近似していることから本記事では割愛いたします。詳細はIROS2022を参照してください。技術Topicsやセッションタイトルなどの情報もそちらで触れております。

■ICRA 2023総括

他のカンファレンス定点観測レポートと同様に、論文数がどのように変化しているか、日本からの論文数がどのように推移しているかを見ていきましょう。

いつもの通り、論文サイトのデータを解析した結果は以下 (表1・図1) に示した通りです。なお、論文数まとめはIEEEの論文集カバーページの他、産総研がまとめているサイトも参考にさせていただきました。全論文リストについては、Paperceptのプログラムサイトから抽出しておりますが、奇数年しかなかったため奇数年のみの結果を出しています。なお、IEEEサイトでも論文確認できますが、公称の論文数と大きくかけ離れていたため今回はPaperceptのみを活用しています。

Year #submissions #papers #authors acceptacce rate Venue
2017 2,289 939 3,654 41.02% Singapore
2018 2,586 1,056 40.84% Brisbane, Australia
2019 2,902 1,317 4,293 45.38% Montreal, Canada
2020 3,466 1,483 42.79% Online
2021 4,005 1,946 8,335 48.59% Xi’an China
2022 3,313 1,428 43.10% Philadelphia, USA
2023 3,125 1,345 7,535 43.04% London, UK

表1 ICRA論文投稿数・採択率

図1 ICRA統計推移

この結果を見ると、オンライン開催だったためか何らかの要因で、最多論文数であった2021年を境に多少論文投稿数が少なくなっているようです。とはいえ、1,000件以上の採択論文数は維持しており、依然として本カンファレンスの盛況ぶりを感じられます。

IROS同様、日本人研究者と思われる名前を抽出し、論文数・日本人著者比率も出してみました(多少の誤差や抜け漏れなどあるかもしれません)(表2)。

Year #papers #authors #JPN papers JPN paper rate #JPN authors #JPN author rate
2017 939 3,654 107 11.40% 253 6.92%
2018 1,056
2019 1,317 4,293 81 6.15% 176 4.10%
2020 1,483
2021 1,946 8,335 169 8.68% 412 4.94%
2022 1,428
2023 1,345 7,535 123 9.14% 226 3.00%

表2 ICRA採択論文全体の論文数・著者数に占める日本人比率

■ICRA 2023 論文賞(Award)

ロボット分野では、コンピュータビジョン分野やニューラルネットワーク分野と違って、実機を動かしたりデモを公開したりしているケースが多くみられます。そのため、他カンファレンス定点観測レポートとは異なり、どのような論文に賞が授与され検索できた範囲でそのデモ動画のリンクをまとめました(表3)。
下記表の通り、ICRA 2023 awardから15件の賞が確認できました。

表3 ICRA 2023論文賞とそれぞれのデモ動画

■日本人研究者別-論文採択数

過去4回(2017、2019、2021、2023)の累積論文数[3件以上]の個別ランキングも出してみました(図2)。87名いらっしゃいます。
上位からロボット分野で著名な先生方が並んでいます。IROSの解析結果と同様、東京大学 JSKの稲葉先生・岡田先生のお名前は同着2位と、改めて世界をリードしていることが分かります。

ICRA2017, 2019, 2021, 2023 
個人別採択件数(3件以上)
著者 採択数
Masayoshi Tomizuka
19
Kei Okada
17
Masayuki Inaba
17
Toshio Fukuda
13
Takamitsu Matsubara
12
Satoshi Tadokoro
11
Kenjiro Tadakuma
8
Fumiya Iida
8
Kazuhiro Kosuge
8
Tetsuya Ogata
8
Shinichi Hirai
8
Koji Kawasaki
7
Jun Morimoto
7
Kenji Koide
6
Masashi Yokozuka
6
Shuji Oishi
6
Atsuhiko Banno
6
Masashi Konyo
6
Kento Kawaharazuka
6
Shigeki Sugano
6
Yasuhisa Hasegawa
6
Masashi Hamaya
5
Kazutoshi Tanaka
5
Kenji Shimada
5
Tania K. Morimoto
5
Kensuke Harada
5
Hiroki Mori
5
Kazunori Ohno
5
Masaru Takeuchi
5
Masahiro Watanabe
4
Mitsuhiro Hayashibe
4
Fumitoshi Matsuno
4
Yasuhisa Hirata
4
Gen Endo
4
Yoshito Okada
4
Jun Takamatsu
4
Tsukasa Ogasawara
4
Tatsuya Harada
4
Yuki Asano
4
Masaru Kojima
4
Katsu Yamane
4
Koichi Suzumori
4
Isuru S. Godage
4
Masahiro Nakajima
4
Nobutaka Tanishima
4
Soshi Iba
3
Noriaki Hirose
3
Takahiro Endo
3
Kanako Harada
3
Yukiyasu Domae
3
Keisuke Nakamura
3
Yuki Shirai
3
Onaizah Onaizah
3
Furokawa Mikio
3
Hirano Takayuki
3
Ryo Yonetani
3
Shinji Mitani
3
Takahiro Miki
3
Ryosuke Tsumura
3
Kanata Suzuki
3
Sho Sakaino
3
Toshiaki Tsuji
3
Manabu Nishiura
3
Yuya Koga
3
Yusuke Omura
3
Yohei Kakiuchi
3
Eri Takane
3
Yoshihisa Ijiri
3
Fumihito Arai
3
Tomoki Anzai
3
Fumio Kanehiro
3
Fumihiko Asano
3
Shin’ichi Warisawa
3
Tomonari Furukawa
3
Jun Jin
3
Kikuo Fujimura
3
Atsushi Yamashita
3
Hajime Asama
3
Daigo Shishika
3
Yoshihiro Kawahara
3
Tatsuya Teramae
3
Tomoyuki Noda
3
Akiyuki Hasegawa
3
Akihiko Ichikawa
3
Gireeja Ranade
3
Shintaro Noda
3
Taro Nakamura
3

図2 ICRA2017, 2019, 2021, 2023 日本人個人別採択件数(3件以上)

なお、[~2件]の採択者の方々もリスト化しておりますが、こちらだけでも535名と膨大になりますので、後日コンテンツ追加を予定しております。

まとめ

今回は、ロボティクス分野でIROSとともに双璧をなすICRAを見てみました。
これまで定点観測シリーズで公開しているCVPRやNuerIPS、ECCVなどは論文採択に主眼を置いた成果指標でした。しかしロボット領域では、実世界での活用(=実装)にも重要な評価があり、デモ動画や実験の様子などが公開されているケースが多く見られます。論文に馴染みがない方でも、ロボットが実際に動いている様子を見て、これらの技術に興味を持つキッカケになれば嬉しく思います。
 

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編集:ResearchPort事業部

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