本記事3行要約:
●近年のAIの進化は目覚ましい
●研究数も増加していることをファクトベースで確認
●それに伴って実用的な応用分野もどんどん出てきており将来が楽しみ
近年、AIの進化には目を見張るものがあります。それを牽引している技術が、機械学習、中でも深層学習であることは明らかです。深層学習自体は、福島邦彦先生のネオコグニトロンや、ジェフリー・ヒントン先生のディープ・ビリーフ・ネットワークやオートエンコーダ、ヤン・ルカン先生の畳み込みニューラルネットワーク(CNN)などですでに存在していました。しかし、その実用的な価値はヒントン先生の研究チームが、2012年ImageNetの物体認識コンペティションで2位以下を圧倒して勝ったのを機に広く知られるようになりました。
ここからは、そのブレークスルーが起こったコンピュータビジョン分野で、研究がどのように増加していったかを見ていきたいと思います。
一つの指標となるのは、この分野で最高峰の会議であり、毎年開催されるCVPR(IEEE/CVF Conference on Computer Vision and Pattern Recognition)における論文投稿数です。図1に、IEEEの論文集に統計が残っている1996年からの推移をまとめてみました(#submissionsの列を参照)。2002年は記録がありませんが、SARSの影響で開催されなかったのかもしれません。
これを見ると、2000年までは500件程度、2001年に900件を超えますが、2007年までは1,000件程度です。この後、徐々に増えつつも2,000件以内で推移し続けます。2012年のブレークスルーの後も、すぐに投稿数が増えた訳ではありませんでしたが、2015年には2,000件を超えます。大きな変化が起こったのは2019年で、この年にそれまでは3,000件台以下だったものが、急に5,000件を越える投稿数になっています。特に採択率が増えた訳ではありません。その後もどんどん増え2021年には7,000件を超えてしまいました。1996年から比べると実に14倍です。その間、採択率はむしろ低くなっており、採択難易度が高くなってきてもいます。
Year | Conference | #papers | #orals | #submissions | acceptance rate | oral acceptance rate | Venue |
---|---|---|---|---|---|---|---|
1996 | CVPR | 137 | 73 | 551 | 39.93% | 13.25% | San Francisco,CA |
1997 | CVPR | 173 | 62 | 544 | 40.44% | 11.40% | San juan,Puerto Rico |
1998 | CVPR | 139 | 42 | 453 | 48.57% | 9.27% | Santa Barbara,CA |
1999 | CVPR | 192 | 73 | 503 | 43.74% | 14.51% | Fort Collins,CO |
2000 | CVPR | 220 | 66 | 466 | 47.21% | 14.16% | Hilton Head,SC |
2001 | CVPR | 273 | 78 | 920 | 29.67% | 8.48% | Kauai,HI |
2002 | CVPR | – | – | – | – | – | – |
2003 | CVPR | 209 | 60 | 905 | 23.09% | 6.63% | Madison,WI |
2004 | CVPR | 260 | 54 | 873 | 29.78% | 6.19% | Washington,DC |
2005 | CVPR | 326 | 75 | 1160 | 28.10% | 6.47% | San Diego,CA |
2006 | CVPR | 318 | 54 | 1131 | 28.12% | 4.77% | New York,NY |
2007 | CVPR | 353 | 60 | 1250 | 28.24% | 4.80% | Minneapolis,MN |
2008 | CVPR | 508 | 64 | 1593 | 31.89% | 4.02% | Anchorage,AK |
2009 | CVPR | 384 | 61 | 1464 | 26.23% | 4.17% | Miami,FL |
2010 | CVPR | 462 | 78 | 1724 | 26.80% | 4.52% | San Francisco,CA |
2011 | CVPR | 436 | 59 | 1677 | 26.00% | 3.52% | Colorado Springs,CO |
2012 | CVPR | 463 | 48 | 1933 | 23.95% | 2.48% | Providence |
2013 | CVPR | 471 | 60 | 1798 | 26.20% | 3.34% | Portland,OR |
2014 | CVPR | 540 | 104 | 1807 | 29.88% | 5.76% | Columbus,OH |
2015 | CVPR | 602 | 71 | 2123 | 28.36% | 3.34% | Boston,MA |
2016 | CVPR | 643 | 83 | 2145 | 29.98% | 3.87% | Las Vegas,NV |
2017 | CVPR | 783 | 71 | 2680 | 29.22% | 2.65% | Hawaii,HW |
2018 | CVPR | 979 | 70 | 3359 | 29.15% | 2.08% | Salt Lake City,UT |
2019 | CVPR | 1294 | 288 | 5160 | 25.08% | 5.58% | Long Beach,CA |
2020 | CVPR | 1467 | 335 | 5865 | 25.01% | 5.71% | Seattle,WA |
2021 | CVPR | 1663 | 295 | 7015 | 23.71% | 4.21% | Nashville,TN |
表 1 CVPR論文投稿数および採択率
これらを見ても、AI関連の研究が急増してきていることが分かります。それに伴い自動運転を始めとして様々な実用的応用分野が生み出され続けています。来年がどれほどの規模になるかは蓋を開けてみないと分かりませんが、報告されたら、またまとめてみようと思います。
今日は、「AIの研究は本当に増えているのか?」を実際の統計を見ながら感じてみました。
このように多くの研究がなされると、それに伴ってより多くの問題が解決されることになり、進化のスピードも早くなっているということが見て取れるでしょう。スマートフォンやカメラ、インターネット上の画像検索や、製造業における自動化、自動運転などと、これからも実用的な応用が生まれ続けていくはずです。これらにより我々の生活も大きく変化しそうで楽しみですね。
*参考ウェブサイト:
https://www.computer.org/csdl/pds/api/csdl/proceedings/download-article/12OmNqzu6Mx/pdf
https://www.computer.org/csdl/pds/api/csdl/proceedings/download-article/12OmNqIQS3T/pdf
https://www.computer.org/csdl/pds/api/csdl/proceedings/download-article/12OmNBOllpg/pdf
https://www.computer.org/csdl/pds/api/csdl/proceedings/download-article/12OmNwJybSb/pdf
https://www.computer.org/csdl/pds/api/csdl/proceedings/download-article/12OmNz2kqry/pdf
https://www.computer.org/csdl/pds/api/csdl/proceedings/download-article/12OmNqBbI2k/pdf
https://www.computer.org/csdl/pds/api/csdl/proceedings/download-article/12OmNviZlqP/pdf
編集:ResearchPort事業部
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